辻川慎一つくば便り

同時代を生きた先輩に会う

「辻さんは、いい男やな〜」と私をみながら、何度も言ってくれる人がおりました。

15年ぶりにお会いした、国鉄からJRで本社の幹部をされてきた人です。

20万人の国鉄職員の三分の一は解雇されると言われた嵐の様な時代を、私はそれに反対する小さな労働組合の委員長で、お相手はそれを進める立場だった。

会社の幹部はもちろん、大組合の幹部たちもたくさん見て来た人です。人を見る目で勝負されて来た人に、しみじみと「いい男だ」と言われました。

軽い言葉だとは思いませんので、心から「ありがとうございます。」と返させて頂きました。

実は、JRにいる後輩を通じて「辻川さんに会いたがっている」との連絡を頂き、昨日お会いして来た次第です。

私は、15年ぶりなのですが「辻さんが新宿本社前で演説していたのを見ていたんだよ。ロマンがあるのは良い事だ。今は、みんな小振りになってしまって人物がいない。」と遠巻きに私を見て来られた事を知りました。

そして、直接ゆっくりとお会いして言われた事でありました。

自慢話ではございません。
67才になる私に、80才を越えた人が言う事ですので、男として人として良いと言ってくれる訳を考えながらお話しを聞かせて頂きました。


(後輩たちが出している動労水戸と言う労働組合のブログからの転用です。)


国鉄分割民営化と言う大改革の嵐の中で、最強と言われ何万人もいた労働組合が崩壊し、上手く尻馬に乗った者がのさばって行く。

そんな中で、20代の青年30名ほどで反旗を翻し、あらゆる差別的扱いを受けながら頑張り抜き、30年以上かけて裁判で完全勝利した。

そんな労働組合とその中心にいた私に対して、心を寄せてくれていた人たちが会社幹部の人たちの中に何人もおりました。

私は、組合員の代表として、その様な人たちに深く感謝し続けて来ました。

大勢の流れに反するリスクを冒してまで、人として接し、陰ながらの力を頂いたのですから。

その頃のお話しを聞きながら「ロマンのある人物がいない」と言う意味を考えました。

そして私には分かった事があります。威勢のよい事を言いながら、実は自分の事しか考えず、組合員(現場労働者)の将来や幸せなんて事は全然考えていなかった。だから、いざとなったら誰も責任を取らなかった。

大組合崩壊の原因は、その重責を引き受ける人がいなかった事に起因する。党利党略で大騒ぎはしても、人に責任を取るなんて人がいなかった。

だから結局「小振り」な人ばかりになってしまった。

そう言う事なんだと思いました。

つまり国鉄分割民営化で崩されたのではなく、いざとなった時に真に責任を引き受けると言う人がいないから崩壊した。

それが真相なんだと思います。

我が仲間たちはたくさん苦労したはずなのに、こんな私に「辻川さんと一緒で楽しかった!」と言ってくれます。

それは、私が逃げずに運命を共にしてくれたみんなを守ると言う事を貫いたからなんだと思うのです。

そう、自分たちが信じる人が逃げたら、それで人の集団としては終わるし、そこに最大の不幸がある。

困難で終わるのではなく、人物がいない時に終わる。

私がお会いした元幹部の人は、これからのJRや世の中の事を心配しながら、私を良い男だと認めてくれたのです。

生きる姿勢やその力は、人から人に伝わる。それは向き合い方や語りかける言葉から伝わる。それが残ってさらに伝わる。

当たり前の事でも、ネット社会で忘れられている事をお互いにしっかりと確認し合った濃密なひと時でございました。

昔だったらあり得ないグータッチをして、その思いを受け取らせて頂きました。

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