冥土inジャパン
「田舎」のバス運転士なれど、日々に変化があるのは道路事情だけではありません。
小学校の送迎バス担当がまわって来るのが、週一あるか無いか。しかも担当が2ルートありますので、添乗員さんと再会するのは月一くらいです。
はじめて担当して「停留所がうろ覚えなので、宜しくお願いします。」とお願いした添乗員さんの女性は70代の方だと思います。
話し方が丁寧なので「地元の方ですか?」とお聞きしましたら「東京から来たのですよ。主人が気に入ってこちらに家を建てたのです。」と言いました。
「東京からだと不便ではないですか?」と訪ねますと「元々福島ですから。それに病気がちだった子供が、こちらに来たら伸び伸びと元気になって病気もしなくなったのですよ。」と言います。
「福島なんですか!どちらですか?」と聞くと「知らないかも知れませんが矢祭町です。」と言う。
「知らないどころか、私はJRにいましたので水郡線で仲間たちと遊びにも行きました。」と言うと、矢祭駅の近くが実家であるとの事でした。
「高校の修学旅行は、棚倉の駅から『煙の出る汽車』で行きました。」
「中学校の同窓会がとても楽しくて、今度は棚倉町の温泉でやるのですよ。」
…
子供たちを無事に降ろして、回送中のわずかな時間ではありますが、とても話しが合いました。
それを忘れないでくれていたのかわかりませんが、久しぶりにご一緒したらソックスを頂きました。
茨城の方に誘ったご主人は、10年以上前に他界され、子供さんは国際結婚でカナダにいるとの事です。
ご本人は、シルバー人材センターに登録されて、小学校のスクールバスの添乗員の仕事の他にも石けん工場の清掃もやり、民生委員や各種の調査員まで引き受けていると言います。
いや〜。凄い。
しかも穏やかな良いお顔をされております。
ソックスは遺品との事で「大事なものではないですか?」と尋ねましたら「整理してあげられるものは差し上げて来たのですよ。」と言うので有り難く頂きました。
民生委員のお仕事もお聞きしました。
「色んな人がおりますので、ご近所の人たちに協力して頂き、本当に行政の支援が必要な人に手を差し伸べて行く」お仕事だとの事でした。
「家族が認知症になったり、奥さまを亡くされて一人でいて病気になってしまったり。自分一人ではどうしようも無い人は、行政の支援を受けた方が良いと思っています。みなさんのお金なんですから。」
「せっかくの人生の終わりを迎えるのに、なるべく楽しかった、良かったと思ってもらいたい。誰しもにお迎えが来るのですから。」
そんなお話しをされます。
「そうですね。お迎えだけは(無理やり命を奪われない限り)平等にやって来ますからね。」と私が言いますと
「そうなんですよ!」と喜んで下さいました。
泊まりがけで同窓会に行くと、翌朝にはみんな声が枯れるほど話すんですよ!と楽しそうに話します。
辛い事もあったと思いますが、負けずに良い人生を送られて来たからこそ、他の人にも最期は幸せになって欲しいと働きかけている様に感じました。
自分は「偉い」と思っている人もたくさんいるかも知れませんが、人知れずに働き続けている人たちに支えられて、この社会が成り立っているんだなとしみじみ思った次第です。
一期一会。
人の縁も大事にできるかどうかも、やっぱり自分次第なんだと思う出会いがございます。
冥土inジャパンもある様に思います。
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