されど微笑まん。
上杉鷹山の師である細井平洲先生によれば、何事にも勇気が必要で勇気無しには何事も成せないとの事です。
とすれば、微笑む事にも勇気が必要なのでございます。

(1936年の日本映画「有りがとうさん」 伊豆半島の舗装されていないつづら折りの道を路線バスが走っていく。路線バスの運転手は、道を譲ってくれるひとたちに(馬にも)、「ありがとう! ありがとう!」と礼をいいながらぬいていく。それで、その運転手さんを、乗客や街道の旅人は「ありがとうさん」と呼ぶようになった。…加山雄三さんの父、上原謙さんがそんなバス運転士を演じました。川端康成さんの原作。)
昨日は朝昼晩と4回の出庫、帰庫。その度に「休憩時間」はあるのですが、出庫時間を間違えると大変なので気は休まりません。
余裕をもって3時起きしてしまいますので眠くなります。
それでも乗客のみなさんや同僚のみなさんには笑顔に努め、お声がけさせて頂きます。
「お願いします。」「ありがとうございました。」と言って頂けるのが、嬉しい私がおります。
休憩時間にフィルター類のホコリをコンプレッサーで吹きとばして、車内清掃をやりましたが「休まないと」とボディと窓は後でやる事に。
かなり効くなーと30分、1時間の休憩時間にちょっと目をつぶりながらも、カーテンの残り一枚はどこか?なんて考える。
目を開けてもう一度車内を見直す。不自然なところをようやく発見して、何とか一応解決してまた時間がある時に納得できる様にしようと考える。
バスのタイプで、ウォッシャー液やブレーキオイルの点検・補充口が違うので確認する。
年末点検項目の半分くらいが済んで、次の作業も考える。
そうして、ラッシュアワーの夜乗務。一番長い3便ですが、金曜ラッシュで運転席に座りっぱなし。
トイレを急ぎ済ませようとしたら、身体が硬まってフラフラする。
それでも乗ってくれている人たちに笑顔で声をかける。「(お正月休みに)ベトナムには帰れないのですか?」と日本語が分かる人には話しかけたりして「来週もお願いします。」と笑顔で降りて行くと嬉しい私がおります。
料金は、会社が出しているのですが、「気をつけてお帰り下さい。」「ありがとうございました。」と声を掛ける事にしております。

しかし、まるでそんな私を嘲笑うかの様に、バスのエンジン異常のインジケーターが点灯する。さらに「尾灯・制動灯」の警告ランプまで点いてしまいました。
う〜、どんだけ〜。
ヘトヘトで帰庫したら、直さないといけないの〜!
一瞬運命を呪たくもなるのですが、やるしかない。私の笑顔が本物になる試練だと気持ちを立て直す。
帰庫して、点呼で報告すると「点検・修理のために、来週から別の車両になります。」という。つまり、年末点検を別のバスでまた一からやり直しという事なんですね。
内心え~って感じなんですが経験は無駄にはならない。「承知しました。」と笑顔で返し「ブレーキランプの左右どちらがダメか見て頂けますか?」とお願いする。
運転席でブレーキを踏んでも、バスは大きいので自分では後ろが見えないのでございます。
自分で修理したばかりの方だったら作業が大変だ。遅い時間なのにツナギに着替えないとならないな。暗いし、寒いし大変だな〜。とかなり不安だったのですが、今度は反対側というので、良かったーと安どする。
ペンライトで照らしながら、ビスを外して交換球を探して交換し、ブレーキを踏んだら警告灯が点かなくなりました。
指先が冷えてしびれたものの、私の責任でやる事がようやく終了。
笑顔で点呼の人に報告とお礼を伝えて帰路につきました。
私の長〜い金曜日です。
バス運転士は、運転だけではなくたくさんの試練があります。
でもそれは人生そのものなのかも知れません。
試練があるから、辛い事や悲しい事もあるからこそ、勇気を出して「されど微笑まん」。
それが、他の人も励ます本物の微笑みなのかも知れませんね。
私自身の革命の様に思います。
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