辻川慎一つくば便り

歩いても、歩いても

昨日は、色々あってブログをあげられませんでした。

まだまだ人生を登れると思っている人と、下りながら始末を考えなければならない人とはなかなか合わない様です。

昨晩は、思い切って見たかった日本映画を見る事にしました。

是枝裕和監督の「歩いても歩いても」と言う映画です。

映像と言葉が大事なんですが、日本語と言うのはなかなか聞き取りづらいといつも思います。まあ、私が難聴気味で高音部が聞こえないと言う事情はありますが、映画好きの人が同じ事を言います。



日常を淡々と描いて、世界に感銘と影響を与えた小津安二郎監督を受け継ぎながら独自性を感じて惹き込まれました。


冒頭から樹木希林さんとYOUさんによる料理のシーンから。料理を軸に日常を描く、食卓を囲むところを軸に家族がいると言うのはサザエさんならずとも大切なんですね。

私たちが忘れて来た家族の光景がそこにはあります。


親子、息子、その嫁、孫、兄弟姉妹、それぞれの心があり確執がありながら一緒に食事をする。それぞれの心を描いて行く映画なんですね。


阿部寛さんはまだ若くて、いまいちさえない息子役で、父親役の原田芳雄さんも頑固で今一の役。樹木希林さんの存在感が凄いですし、嫁役の夏川結衣さんも魅力的です。

やはりさえない婿役の高橋和也さんなんですが、彼の一人芝居を見た事があり凄い役者である事を知っておりますのでさり気なく凄い演技をしていると感じます。


そして、逗子市が舞台の様ですが事故で亡くなった長男の命日に集まった家族で墓参りをするシーンがあります。


毒舌気味の樹木希林さんが「息子の墓をお参りする親の気持ちが分かるか。10年かそこらで忘れられてはたまらない。」(正確ではありませんが)と言う言葉がグサッと来て泣きそうになりました。

家族って一体何?って考えさせられます。彼女が軸にあって、揺るぎながらも家族なんですね。

その彼女の旦那さん(原田芳雄)との思い出の歌が「ブルーライトヨコハマ」。亡くなられたいしだあゆみさんの歌でした。そうです「歩いても〜、歩いても〜♫」なんですね。

https://youtu.be/sped3Xtb4Lc?si=FofcurHcV_Qgc0P9

映画の舞台の地も家も、魅力的に美しく撮られております。


家族には風景があると感じます。食卓を囲み、立ち戻る風景がある。そんな家族は確執があっても、戻るところがあるのです。

私が子どもの頃の風景だったよな〜って思いました。映画の設定よりも、ずっと貧しかったですが。

見かけ上豊かになって、お金があれば何でも簡単に手に入る様になり、さり気ないものに相手への思いを込めたり、心を砕いて対話したりをしなくなってしまいましたよね。

つまり、心の方は貧しくなってしまった。そんな時代の変化に対して「違ってないかい?」「忘れられてたまるか!」そんな心のメッセージのある2008年に作られた映画の様に感じました。

高齢の両親を別にして、そんな家族を作れなかった私にはとても沁みる映画でございました。

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