辻川慎一つくば便り

飛行機雲

同僚たち二人が、車を見ながら話しているので「何かありましたか?」と聞く。

「いやぁ~、車を縁石に乗り上げてドアの下が凹んじゃったのさ。」

「コンビニ前で縁石に乗り上げて、動けない高齢者を良く見かけますがコンビニですか?」と私。

「うんそうなんだ。そう言えば、3車線を逆走して来る車もあるんだよ。俺は3回も遭って、慌ててクラクション鳴らしたよ。」

「え~っ。危ないですね。」と言うと「そうなんだよ。片側3車線もあると分かんなくなるんだろうね。俺も間違えた事があるし。」と笑う。

う〜。運転を仕事とする2つ年上の先輩のお話しです。前職は、自動車教習所の先生でございました。

本当は、笑えないお話なんですが「俺は運転が下手だから」と笑います。

「あ〜、教えるのが上手かったんですよね。」と合わせながら、とても心配になる私がおります。


朝の乗務を終えて、ホッとして空を見上げると飛行機雲が2つクロスしておりました。

飛行機雲が長く伸びるのは、大気中の水分が多く雨の予兆であるそうでございます。

別の同僚が、私のところに来て「本社に退職届を持って行って欲しい。」との事。まだ知り合って2ヶ月。正月に私の家で楽しく飲んだばかりでございました。

「辻川さん。人生は選択の連続だよね。一日のうちにも右に行くか左に行くかとか何千と選択している。俺ね、それがほとんど当たらないんだよ。」と言う。

「そんな事無いでしょう!私は助けられましたし…」と返そうとしても話は聞いてくれません。

「宿命なんです!申し訳ないが退職届をお願いします。」と言って缶コーヒーをくれました。

ドライバーとしては、かなり深刻な事を笑い飛ばす同僚。上手く行かない事ばかりだと言って辞めてしまう同僚。「余裕が無いんだ。」と言いながら、嫌なら辞める余裕があるみたいです。

親しくなった分、何とも言えない気持ちになりました。


朝の停車中、テレビで大谷翔平選手の尋常でない手のマメが目に入りました。


類まれな才能があるだけでなく、人知れず凄まじい努力をして慢心する事が無い。凄い青年だと思います。

比べる事は出来ないけれど、取り立てて才能の無い私たちは一体どれだけ努力してるんだろう?

昔もそれなりに厳しかったとは言え、今は何となくやれてきた時代では無い様に思います。

同僚からは「今の若い人は、苦労しないでこれから大変だろうね。」と言う話しも出ます。

う〜。

私には、社会や世間に甘える余地が無くなっている時代を、若い世代が懸命に生きている様に思えるのですが。


時代や社会の激しい変化と別なところで、甘えて生きているのはどちらなのか?

ほぼ同年代の同僚のお陰で、自分自身も「俺は頑張って来た」なんて甘えてないのか?自分自身の一層の努力を怠り、他人任せにしていないのか?と考えさせられてしまいます。


飛行機写真家の写真展に行って、何故か一番気に入った写真です。茨城空港だそうでございます。

電車も、車も、そして飛行機も、働く人のたゆまぬ努力によって安全が保たれているのだと思います。

飛行機雲が知らせる雨が、大雪にならないと良いですね。

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