辻川慎一つくば便り

パーフェクトデイズ

一昨日の晩、新しい職場の同僚が家に来てくれました。迎えるために家を出ようとすると、隣家にパトカーが停まっている。何があったか尋ねてみると、隣家の人が亡くなっていると言う。

昨年高齢の母親を亡くし、一人暮らしをしていた息子さんです。私と変わらない年代の人でした。

妻が、正月だというのでお煮しめを届けたばかりでしたので、慌てて妻に知らせました。

ご近所では、唯一付き合いのあった隣家の方が続けて亡くなってしまいました。

何とあっけない幕切れでしょうか。

同僚にも話すと「私が住むアパートでも、一人暮らしの高齢者が三人亡くなったよ。そのうち二人は、私が警察に連絡した。珍しく無い事だよ。」と言う。

その同僚が帰ってから、妻は「人が亡くなる事に慣れて、当たり前になってはいけないと思う。」と私に話す。



そんな中、昨日は私が観たいと思っていたヴィム・ヴェンダース監督で役所広司さんが主演した「パーフェクトデイズ」を観に行きました。


「久しぶりに美術館に行った感じがする映画だね。」と妻が言う様に、映像が素晴らしく、使われている70年代の音楽も印象的に再び光が当てられています。

そしてほとんど言葉を使わずに演技する役所広司さんが凄い。役所広司さんとヴィム・ヴェンダース監督の出会いがなければ、できない作品だったと思います。

ベルリン国際映画祭で、主演男優賞になった理由が分かりました。



東京の公園の何とも見事なトイレ掃除をしながら、木を愛し、木漏れ日を撮り続ける平山さん(役所広司)が主人公。


そこで出会った人々との、一瞬のひと時。それぞれに、事情があり、人生の物語があるはずなのですが、それは語られません。

平山さん自身のストーリーもです。

そこに古いカセットテープで、きらめく様に音楽が流されて行く。



モチーフは、ルー・リードの「パーフェクトデイズ」。


https://youtu.be/15crm4zuB04?si=7SuEF6BZaZWAny1Q

「君と過ごせてうれしいよ
 
Oh such a perfect day
 
ああ なんて完璧な一日」

そんな歌詞です。

この歌の背景にあるのは、聖書からの言葉だそうです。

「人は自分のまいたものを、刈り取ることになる。
わたしたちは、善を行うことに、うみ疲れてはならない。たゆまないでいると、時が来れば刈り取るようになる。」

木漏れ日は、一瞬一瞬に輝いて、しかも同じものは一つも無い。それは、まるで命の様に儚いけれど、人は種を撒き続ける事で、それを刈り取る事になる。

言葉で語れば簡単な事ですが、敢えて語らないところに深さを感じる映画でした。


(映画を観た後の夕暮れの空も凄かった。)

種を撒き続けながら、誰かと過ごす一瞬一瞬が輝いているんだ。実はそれが、「完璧な日々」なんだよ。

そこに気付こうよ。

自然も、映画も、音楽も、芸術にも出会い、触れながら、みんなが一瞬一瞬を輝かせて生きている。実は、そこに気付かない事が不幸なのかも知れません。

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