週末金曜日は、3時頃から雨が降り出しました。雨が降ると、バスのボディがタイヤで舞い上げた水で汚れます。それを次に使うために綺麗にしておかなければなりませんので、帰庫してから洗い、拭き取る作業が発生します。車内の清掃に加えてです。
雨中の作業ですから、あ〜あと思います。でも夜間に雨の中を運転する方が怖いので、小学校の送迎で良かったと思います。雨の中夜間に運転する事になる同僚たちの大変さを思いながら。
ただでも夜間は見えにくい。雨だと光が乱反射するので、ラインや路肩が全く見えなくなります。慣れと必死の勘頼みでギリギリの境界を見極める世界。そんな中を大型バスで走る。私にはとても恐ろしい事です。
でも、安全第一に走り無事に送迎しなければならない。やりきらなければならない。疲れ切ってしまいますが、終わってから、次に迎えるためにさらに綺麗にしなければならないのです。
そう言う苦労や大変さは、見えませんね。「当たり前」の事だと思われておりますから。

(バスの洗車、清掃を終えて夕方帰宅。買っておいたお豆腐とタラで「たらちり鍋」を作り、日本酒を頂く。1週間頑張って、何とか無事に終えた自分へのご褒美です。もちろん昆布出汁。フルーツポン酢に醤油を合わせて頂きました。沁みる様に美味しい。)
疲れ切っているところに、JRの後輩からのメールが届きました。「人が熊に襲われたから駆除すれば良いと言うのは人間の勝手なのでは?」とありました。
なかなか難問でございます。小学校の添乗員さんには、山歩きと狩猟をしていた方がいて「熊は美味いんだよ。」と熊の爪を大事に持っていて見せて頂いた事があります。その方は「熊を撃ってはならないなんてバカな事を言うから襲われるんだ。」とはっきりおっしゃる。
私は、動物園でしか熊を見た事が無いのでどちらが正しいとは言えない。山で熊に遭遇したら怖いだろうなと思う。熊の方もエサを求めながら人間に遭遇したら、命の危機を感じるのかも知れない。「最強」とは言え、常に命がけの厳しい自然界に生きている訳ですから。
住んでいる世界が違う。「森のくまさん」とは違う訳です。
人は自分たちの生活を守るために、日常的にも境界を作っていますね。「3匹の子豚」の様により強固な壁を作り安心な生活を送ると言うのは、やはり厳しい自然界で生き抜いて来た結果の様に思います。
ところで、西洋等大陸では石などの強固な壁の家ですが、日本では木や紙だったりしましたね。田舎に行くと鍵も無かった。東南アジアではスカスカの竹だったりもします。脅威が違っていた様に思います。
なので境界や壁を破ると言うのは、本当は人に取って命がけの行為になる。
実は、その事を境界を作って生きて来た人間の方が忘れてしまっているのでは無いか?とても安易に考えてしまっている様に思います。
人の間にも境界があるのに勝手にズカズカと踏み込んで、踏みにじって平然としていないのか?
そうすると、本質では戦(いくさ)状態になっていると思うのです。人の境界を越えませんよと言う意思表示が、礼儀である。つまり、生きて自分を守るために「あいさつ」を子どもたちに教えて来たのだと私は思います。

(「たらちり鍋」のスープにうどん、ネギと油揚げを入れてひと煮立ち。いやぁ〜めちゃ美味しい締めになりました。)
ちなみに長い引用になりますが、
WHO発表の人を最も多く殺している動物ランキング〜
1位: 蚊(か)
マラリア、デング熱、日本脳炎などの病気を媒介します。
年間約83万人もの人が命を落としています。
2位: 人間
戦争やテロ、殺人などによるものです。
年間約47万5千人もの死者を出しています。
3位: ヘビ
毒ヘビによる中毒死です。
年間約5万人もの死者を出しています。
4位: 犬
狂犬病によるものです。
年間約2万5千人の死者を出しています。
5位: ツェツェバエ
アフリカ睡眠病を媒介します。
年間約1万人の死者を出しています。
日本国内に限定すると、ハチが最も人を殺している生物とされていて、熊はランキング外。
日本の交通事故死者数は、昨年少し減って2600名くらい。一日約8人が亡くなっております。ただ死者数だけが問題なのではなく、深刻な障害を負う重症者が多数おります。
日々バスを運転しながら感じる事ですが、こちらも境界線を軽んじたり無視した結果と言える様に思います。
年間自殺者に至っては、2万人以上。熊なんてもんじゃありませんね。私には、やはり人と人とのギリギリの境界を踏みにじられて、この世をでの居場所を失った結果の様に思えます。

(今日は、実家の両親を訪ねます。御赤飯を炊いて、JRの後輩が「ご両親に」と買ってくれた入浴剤がお土産です。)
「人間に国境は無い。」とも言われますが、国境を超える事は、当然ながら境界があると言う事をちゃんと理解する事から。人にも境界がある。
境界がある事をしっかりと見切れずに踏み込めば、死闘になる。死をかけた行為になる。
そこを無視して、友人になれるとか親しくなれるなんて事は幻想でしかないのです。子どもたちに「あいさつ」の大切さを教えるのは、境界を見極め自分たちの身を守るため。熊たちにも境界を教え無ければ守れない。その方法は?
大きなバスで、ギリギリの境界を見極めながら、礼儀を重んじて日々働いている私の実感なのでございます。