辻川慎一つくば便り

負けから学べる事の大切さ。

私が青年だった頃には、たくさんの政治党派があって、われこそがと主張の正しさを争っておりました。

国鉄と言うところは、労働組合と労働者の支持を巡って主張を闘わせる事で活気に溢れている面がございました。

まあ、戦国時代の様な感じでした。私の方は、一番過激だと言われた党派の引きで研究者の道を捨てて国鉄に入ったのでありました。

活気があって、面白い人たちがたくさんいて、ずいぶんと可愛がられたり、あるいは別の党派の人たちからは畏怖されたり憎まれたり。

それが1987年の国鉄分割民営化と言う大改革で動揺し、大きく崩れました。さらに1999年のソ連崩壊で「労働者の国家」幻想が崩れ去ってしまいました。

まあ、そんな時代の中で全員20代の青年40人足らずで、国鉄分割民営化に反対すると自分たち自身の新しい労働組合を作った訳ですから、衝撃的だったのですね。

その中心におりましたので「あの時代に誰も出来なかった事をやった。」と知っている人は、今でも言ってくれます。

その時代から、不当な扱いを受けながら様々な苦難を乗り越えての40年。最高裁でも勝ち、汚名を晴らしたどころか慰謝料まで勝ち取る事も出来ました。

私は、運命を共にしてくれた仲間たちへの責任を果たしたのでございますが、政治党派との関係も限界に来ていました。

党派と言うのは、常に正しくなければならないので、問題が起きれば個人の問題にして済まそうとする。今もずっと同じ事を繰り返しております。時代から取り残されて、終わっているのです。

そんなこんなで、10代から賭けて来た政治党派を離党した訳です。

労働組合の大半の仲間たちは「辻川さんほど党派のために頑張って来た人はいないのに、非難するなんておかしい。」と言ってくれましたが、政治党派の側に立った人たちも何人かおりました。

その一人が、前委員長。頼んだ責任がありましたので、ずいぶんと擁護して来たのではありますが裏目に出てしまいました。


組合の大会で、「組合員より党派の利益なのか!」と2度3度と大多数の組合員から不信任を受けて、前委員長なのに組合費を払わなくなり、結局数人で別の労働組合を立ち上げたのです。


まあ、それは個人の自由ですから良いとして、組合の現場機関である支部のお金まで持ち逃げしてしまいました。

その酷さに現場組合員が怒って、返還を要求した裁判の判決が昨日ありました。

大元をたどれば私が原因でございますので、有給休暇を頂いて参加した次第でございます。

判決の方は、請求の棄却と言う事でお金を取り戻す事はできませんでした。

何しろ、証拠になる帳簿は破棄して金は無いと言うのですから、持ち逃げの証拠が無い訳です。しかも、脱退する前でしたので本部から支部に交付金を出した事に対して「問題にもせずに支払った」ではないか。それを返還しろと言うのはおかしい。そんな論理でございました。

まあ、金をごまかした帳簿を捨ててしまえば証拠が無いなんて事が世間では通用しないでしょうと思う訳ですが、組合費未払いを始めた人たちに、スジを通して交付金を渡した事が裏目にでたのでした。


(みんなで楽しく食べた昼定食は「カツ丼」でありました。)

請求金額は、57万円。通常だと裁判を起こすとマイナスになってしまう金額なので「泣き寝入り」するのが多いのですが「組合員の金を前委員長が持ち逃げするなんて許せない。例え持ち出しであろうと許してはならない。」と言うのが現場組合員の声でしたので、執行部の人たちが弁護士を頼まずに自分たちでやり抜いた訳です。

前回異例の証人尋問が行われ、お金の使い道や使った期間について二転三転させるみっともない前委員長の姿を見せ、あげくに「辻川が悪い」と言ったとの事でございました。私が悪いから組合員のお金を持ち逃げしても良いんだって事にはなりませんよね。世間の常識も無い様です。

まあ、そんな人を労働組合の最高責任者に推したのも私でございますので、その意味では私の責任でございます。

 
(帰路十五夜には見れなかった月が出ておりました。)


「逃げ得かよ!裁判長は何見てるんだ!」と当然にも怒る仲間たち。

「まあ、組合費も払わなくなった奴に交付金を渡した甘さを突かれたね。でも、自分たちでそう判断したのだから良いんだよ。」と私が言うと「甘さは、辻川さん譲りですよ。」と言われた次第でございます。「あ〜、そうだね」やっぱり私の責任でなのでございます。

厳しく闘いながらも、人に甘い。そんな私だったから長い間一緒に闘い生きて来れたと言うのも事実なのだと思います。

「でもね。情だけでは行かない時代になっていると言う事を若い裁判官が教えてくれたね。負けからも時代の変化を良く学ぶ事が大事だよね。」と私。

そう「辻川さんが悪い!」って言えるのは、本当はこの仲間たちなんですね。それでも、人として信頼して愛してくれるのですから。

みんなで楽しく飲んで、バグして、握手して愉しい時を過ごしました。

ちなみにこれは「敗北」では無いのです。敗北と言う言葉は、北と言う字が背中合わせになっている事から、闘っている相手に背中を見せて逃げる事を言います。なので逃げ続け、裁判官の判決に助けられても背中を見せて逃げた人たちの事を敗北者と言うのでございます。

お天道様も、月も、何より人がちゃんと見ている事を忘れてはなりません。晩節を汚してはならない。そこに私の仲間たちへの最後の責任がある。


今朝の出勤時間にも、月が出ておりました。まるで仲間たちの様に、気持ちの良い月でございました。

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