辻川慎一つくば便り

揺れ動くとも沈まず。

昨日から実家の両親を訪ねております。

「もう嫌だ。早くお迎えが来ないかな。」といきなり言う母。何かあったかなと考えながら「ところが、思う様には来ないんだな〜。」と私。

「前歯も無くなった。」と言う母。あ〜、行きつけの歯医者がヤブ医者の様で、歯から細菌が入って顔が腫れたと言っていた事を思い出した。医者を変えて、歯を抜いてから少し楽になった様だった。

「痛かったろう?」と聞くと「痛いなんてもんじゃないよ。それでも父さんを病院に連れて行ってたんだよ。」と言う。

「痛みがあると死にたくなっちゃうんだよ。元気になると、もう少し頑張ろうかって気持ちになるからね。」と言うと「そうかも知れないね。」と言う。


「ちょっと来て。」と言うので「どうしたの?」と聞くと「お前が持って来てくれた菊の鉢を、花が終わったからプランターに植え替えたらまた花が出て来たよ。」と言う。「そうか〜。菊は強いよね。」と私が言うと「そうなんだよ。だから好きなんだよ。厳しい環境に負けないで花を咲かせるから。」「でもね、姉に菊が好きだと言ったら『お前は墓の花が好きなのか。』と言われたんだ。」と言う。「強いし、綺麗だし、良い香りがするのにね。」と言うと「そうなんだよ!」と喜ぶ母だった。


母への土産は、友人に頂いた大福餅とたくさんの菊だった。父には、私手づくりの山菜おこわ。


大変なのに、いつもの様に心尽くしの料理を作ってくれました。煮物もポテトサラダも、とても美味しい。


「煮物は、母さんの作ったのにかなわないな〜。とっても美味しいよ。」と伝える。「味も適当になったのに。」と言いながら喜んでくれた様だ。「父さんは、何も言わずに食べるだけだよ。」と言う。

「ゴッホを見に行ったんだって?」と言うので「母さんも連れて行きたかったよ。上野公園の紅葉も綺麗だったしね。」と言うと「上野公園か〜。」「私は、あの睡蓮を描いた人の絵も好きだな。」と言うので「あ~モネだね。ゴッホもモネも、日本人に好きな人が多いのはね、彼らが浮世絵が好きだったからなんだよ。」と話すと「え~っ。そうなんだ。」と驚く。

「それからね。一番好きなのはねミレーなんだよ。」と言う母。「あ~、落ち穂拾いとか種まく人のミレーだね。ゴッホもミレーが大好きだったんだよ。」と話すとまた驚く。

「私には楽しみが無いんだよ。」とつぶやく様に言うので「お互いに元気でいれば、連れて行けるから。」と言う私。


(ゴッホの「星月夜」。朝を孕んだ夜。彼が好んで描いた糸杉は、不吉な木・お墓の木とされている。日本の菊と似た扱いを受けている。)


「火に気を付けてね。火事は怖いよ。」と寝る前に言う母。「いっそ、三人で逝くかい?」と言うと「そう上手くは行かないんだな〜。」と笑う母。

ありゃ、来た時に俺が言った事じゃないか?と可笑しくなった。

心は揺れ動く。ところが揺れ動くからこそ、揺るぎ無く見える。

揺れないビルが地震で倒壊する様に、揺るがないものは実は弱い。

心も身体も揺れている。揺れ動くとも沈まない。それが大切なんだと思う。揺れ無いものは実は脆く、弱い。大切な心の働きだと思う。

そして、楽しみや喜びは心の栄養剤。楽しめると免疫力も上がる。つまり生命力をよみがえらせると言う訳だ。

だから揺れて良いんだよ。弱さでなく、生命のつよさなんだから。


(ゴッホの「草むら」。草むらは、絶えず風に揺れている。)


https://youtu.be/2hACJAwT4ik?si=g53g1y6VfiEz25nB

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