辻川慎一つくば便り

振り返らずには分からない事

今日は土曜日なれど久しぶりの乗務。

日給月給で、固定給の保証の無い身ですので有難たく思う。休んでも保証があったJR時代とは大違い。しかも、仕事が無くなると会社も労働者もやって行けなくなる厳しい現実だ。

そんな中で、高齢者の仲間入りをしても必要とされる日々に充実感を感じる。例え人よりも少なかろうと、苦労しながら得たお金と言うものには価値がある。元JR社員だった私は、しみじみとそう感じている。

結局ほとんど何も残らなかったが、今を精一杯生きられるだけで幸せなのかも知れないと思う。


土曜日の早朝。車庫も道もガランとしていたので夜明け前の国道408号線のモミジバフウの街路樹を撮って見た。

夜明けと共に、この街路樹の中をバスで走って行く。とても爽快だ。

日がさして、青空になればまるでゴッホの絵の世界の様に色鮮やかになる。


例えば、こんな感じだ。浮世絵にあこがれたゴッホが、日本の紅葉を見たらどんなに感動した事だろう。なんて思う。


さて、過去を振り返えって後悔し続けるのは良くないと「振り返らず前を見よう」なんて言われる。

ところが、振り返らずには見えないものがある。運転中は前はもちろん、全体を見なければならない。振り返える訳には行かないので、ミラーがある訳だ。

何気に、ミラーに映る後ろの景色と言うのは現実よりも綺麗に見える事に気付いているだろうか?鏡の世界と言うのも不思議だと思う。

そんな訳で運転中は、前を向いている訳だが、乗客の乗り降りの際には停車しているので、ニュートラルにしてサイドブレーキを引いてから、私は乗り降りする乗客の方を見る。見て一人一人にあいさつをする。

そうすると無言で乗り降りする人たちが、私の方を見てだんだんとあいさつを返してくれる様になる。そして目を合わせてくれる様になる。これも不思議な世界だと思う。

別に自分が良くやっているなんて強調したい訳では無い。そんな事で給料が上がる訳も無い。

一期一会。今を一緒に生きている一人一人を大切にしたいと思っているだけ。だから心からあいさつをして「お疲れ様です。」「ありがとうございました。」「お気をつけて。」と言う言葉もなるべく伝えている。

相手の方、つまり後ろを向けば目と目を合わせられる。合わせないあいさつと言うのは、ただ言ってるだけになる。

お互いにアイコンタクトができると、お互いに嬉しいと思う。運転士と乗客だが、お互いに働いている人と人なんだって、忘れがちな事に気付くのだと思う。

バイオリンを弾く同僚と音楽の話しになった。お互いにバッハに癒やされる同士だと分かったが「最近はね、石川さゆりだとかの演歌が沁みるんだよ。」と言う。「何か分かるな〜。私の方は70年代のフォークソングが沁みている。日本のだけでなくアメリカのフォークも良いですね。」なんて話をした。


ジョニ・ミッチェルと言う、ミック・ジャガーをたじろがせる様なおばさんの若きし頃の歌に「サークルゲーム」と言う名曲がある。


https://youtu.be/QCc8BqBk7AA?si=ns-h9S_mmivfOYPO

季節はくりかえし巡る
ペンキで塗られた子馬が延々と
上がったり下がったりする
時という回転木馬に捕らえられた私たちは
戻ることなどできない
たどってきた道を
ふり返ることしかできない
ぐるぐる回り続ける
サークルゲームの中で

そんな歌詞の歌だ。

回転木馬にバックミラーは無いので、確かに振り返えらないと後ろの人は見えない。振り返って「楽しいね!」と笑顔でアイコンタクトする。

時は回転木馬。戻れないけど振り返る事はできる。諸行無常に通じる歌詞に思うけど、振り返って初めてちゃんと見える事がある。

私の最近の発見がまた一つあった。

無常の世界の中だけど、人は微笑み合って声を掛け合い、アイコンタクトしながら孤独の哀しみを超えて今を生きる。

そこは、洋の東西を問わず同じだよな〜なんて思う。

さて、土曜の晩は意外に混んでいる。
バス運転士も、働く人々もみんな一緒に今を生きている。みなさんに助けて頂きながら、みなさんの安全を守る。

良いサタデーナイトにするために、もう一働きしよう。

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