見て学び、やって見て学ぶ。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」と言うのは、山本五十六と言う昔の日本海軍の司令長官の言葉でした。戦争が良いとは決して思いませんが、その時代の自分の職務上の責任を潔く果たした人としての器が大きな人だったのだと思ったりします。
人としての器も、バス運転士としての技量も未熟である事は自分自身が一番感じている私ですが、山本五十六さんの言葉の裏返しで「見て学び、やって見て自分のものとして、それを認められる事で仕事のモチベーションにして来た。」と言うのは事実でございます。
それはJR時代の勝田車両センターの仲間たちからも学んだ事でした。
国鉄からJRへの時代と言うのは、政治党派が覇を競っていた激しい時代でもありました。どの党派が正しいのか、現場労働者への影響力を持つのか?その対立が激しく、学生運動の内ゲバが労働運動にも持ち込まれ死人もかなり出ました。
私もいつ襲われて、殺されるか分からない。今思えば、人を殺して心から人々に支持されるはずが無いと思いますが、国鉄分割民営化で自死した労働者の無念を思いながら闘い抜く。自分の思いは間違ってはいないと、殺害予告を受けながらも怯まずに闘っておりました。
しかし、◯◯のために、いつ死ぬか分からないと言う生き方は、私自身の好きや人生については投げ出しながらになりましたので、行き当たりばったり。なるようにしかならないと言う生き方になってしまったのですね。今でも、何か問題に対応する自分はいても、本当に好きな事、つまり自分が幸せに感じる事は何だ?が良く分からない私がおりました。
バス会社に、大型二種免許取得費用助成で入社される人も増えております。私の場合は60才を超えてのチャレンジでしたので、自腹で取得するのか採用の条件でございました。55万円ほどかかり、困難に満ちた取得でしたが、会社に借りがない分気は楽でした。
助成を受けた人は、借りを一人前の運転士になり、実際に働く事で返す事になります。
30代の人やバス経験者、あるいは大型トラックを運転していた事のある人は対応できていますが、50代や60代の未経験者になると決して甘くない仕事でございます。私自身が甘く考えて痛い思いをたくさんして来ましたので。
なので助成で入社してからも、50代、60代で未経験者の人には、なかなか「見極め」でOKがでない現状があります。任せられないのですね。何かあれば本人だけでなく、任せた会社の責任になるのですから。
乗客は元より、社員も会社も守る厳しさの中に甘さは許されないのです。
私と同い年で、バス運転で数々の厳しい修羅場をくぐり抜けながら、自分の好きを徹底的にやり抜いて来たプロ中のプロドライバーにお聞きしました。
(写真は、その人が教えてくれたデローザと言うイタリア製のロードバイクです。自分で工房を持ち、壊れた自転車を安く手に入れ新品の様にリペアして乗っていると聞きました。知りませんでしたが100万円以上する自転車なんですね。)
「なかなかOKが出せない人に、どう教えて来たのですか?」と尋ねました。「難しくて危険な箇所に対して分かる様に具体的に説明して、やらせて見てさらにポイントを説明する。」と言うのです。感情的にならずに人を見ながら、具体的になんですね。危険は具体的ですから。
そして、本人からの気持ちも聞くと言います。「怒られてばかりで辛い。」とか言う事に対しては「怒っているんじゃないよ。何とか一人立してもらいたいとみんなが思っているからなんだよ。」と説明すると言うのです。
感情的でない具体的な指導と言うのは、やはり技量があってできる事だと思います。自分が好きに徹底的にこだわりながら生きて来た人だから、感情的にならずに教えられる様に思いました。
具体性が、私のレベルとは違うのですから。
やっぱり、凄い人だなと改めて感心すると共に、自分の好き=幸せを極めて来た人だからなんだなと思いました。
と言う訳で、見て学び、やって見て自分自身の技量にしていくと言うのはバス運転だけにとどまらないと言う、人に対する学びがございました。その方は、運転レベルとは別に私を認め続け、決して下には置かずにいてくれる人でもあります。
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